この記事では、2009年にポーカー界に革命を起こした統計ツール「ポーカートラッカー」について解説します。
ポーカーは正しい選択・意思決定を続けるゲームですが、その大きな根拠となるのは数学的なデータです。ポーカートラッカーが登場するまで、記憶力や経験、勘、センスなど今でも重要な要素ではありますが、これらの能力の比重が今よりずっと大きかったんです。それが、ポーカートラッカーの登場によって、レイズが少ない、コールが多いといった主観的な評価だけでなく、客観的なデータを解析することで、よりよいプレイを追求することが、初めて可能となりました。ビッグデータという言葉が流行語大賞になったのは2013年ですが、ポーカー界ではビッグデータの波が一般社会よりかなり早く来ていたことが分かります。
この記事では、ポーカートラッカーで分析できる基本的な指標、初心者でも活用しやすいシンプルで分かりやすい指標の使い方を解説します。
この記事を読むと、初心者でも指標を活用できるようになるおススメの設定方法、復習の方法が習得できます。紹介した指標の設定をそのままインポートできるファイルはこちらです。
ポーカートラッカーとは
ポーカートラッカーとは、オンラインポーカーでプレイしたハンドの対戦履歴、ハンドヒストリーを取り込んで、ハンド数や参加率、レイズ率からハンドごとの勝率までありとあらゆる統計データを解析して、その結果をデータベース化し、自分で復習したりプレイ中に主要データをヘッズアップディスプレイ、HUDと呼ばれるものですが、これを画面に重複して映して、リアルタイムでプレイの参考にしたりできるものです。
これがHUDの表示例ですが、表示できる指標や色を自分で選ぶことができます。
この記事では、初心者でも使いやすい指標に限定して、ポーカートラッカーの活用方法の基本的知識を説明します。今回はハンド数が貯まりやすく使いやすいキャッシュゲームのHUDの設定方法を説明します。
キャッシュゲームの指標
ここからは個別の指標を説明していきます。
Total AF
まずはトータルアグレッションファクターです。
Total AFは、(ベットとレイズの回数)/コールの回数の数値です。コールと比較して、どれくらいベットの頻度が高いかを把握する指標となります。日本を代表するトッププレイヤー木原直哉プロから最も重要な指標と聞いてから、私も最重要視するようになりました。
アグレッションファクターは、どれくらいアグレッシブなプレイヤーかが分かる指標です。また、分母がコールの数なので、コールすればするほど数字が低くなるので、数字が大きいプレイヤーはアグレッシブなだけでなくコールが少ないプレイヤーだということが分かります。この指標は、プリフロップ以降のすべてのアクションが対象となるのでデータが貯まりやすく、プレイハンド数が少なくても信頼性が高くなる指標です。
2~3くらいが適正値です。
1以下の場合はコールが多過ぎる・ブラフしなさすぎ、4以上はブラフしすぎ、コールが少ないプレイヤーと言えます。
1以下のプレイヤーはパッシブなコーラーなので、CBやレイズをされたときは降りる、ブラフはコールされやすいので頻度を減らしますが、バリューは大きめにベットするなどのエクスプロイトができます。
4以上のプレイヤーはアグレッシブ過ぎてコールが少ないので、セカンドペアなどのマージナルなハンドでブラフキャッチも多めにできますし、相手が打ってこない場合のブラフなども多用できます。
これから説明するほかの指標も同様ですが、1以下、4以上の数字を色分けすることで、プレイ中に上記の弱点のあるプレイヤーを発見できます。先ほどのリンクの私の作った指標ではアグレッシブ過ぎる場合は濃い赤、パッシブすぎる場合はピンク、適正な場合は白になるように設定してあります。
VPIP/PFR
この二つは、基本中の基本の指標です。
ブラインド以外の参加率を表すのがVPIP、プリフロップでレイズで参加する率がPFRです。PFRはオープンだけでなく3ベットや4ベットも含みます。
この2つの指標を使うことで、相手の持っているハンドの幅、いわゆるハンドレンジが推計できます。また、自分のプレイについて、事前に決めたスターティングハンドどおりにプレイできているかの復習にも使えます。
VPIPは20~25、PFRは15~20が適正値です。VPIP-PFRが5以上になるとパッシブすぎるので、PFRがVPIP-5を大きく下回らないように気を付けましょう。
AF、VPIP/PFRは500ハンドくらいから参考にできますし、プレイヤーのざっくりとした傾向の把握は100ハンドくらいで分かります。
3Bet PF
3Bet Preflop=プリフロップで3ベットをした回数/自分の前にオープンレイズが入っている回数。
これもプリフロップの指標なので比較的データは貯まりやすいですが、自分の前にオープンレイズが入っていないと取れない指標なので、AF、VPIP/PFRには劣ります。
7~9%前後が適正値です。3以下は3ベットしなさすぎ、13以上はしすぎですね。
3以下の人の3ベットはマジ手しか出てこないので、AA・KKくらいでしか4ベットはできません。逆にそういうハンドを持っているときは大きく打ち返せます。
Fold to 3Bet
Fold to 3Betとは自分が2ベットをした後3ベットをされた場合にフォールドした%です。
50%前後が適正とされます。40%以下は3ベットに降りなすぎ、60%以上は3ベットに降りすぎです。
自分がオープンをして3ベットを打ち返されたケースのみが対象となるので、
ハンド数が1000ハンド以上貯まっていないとあまりデータに信憑性がでず、かなり参考程度です。
40%以下の人はリスチールのターゲットとしては不適切ですが、バリュー3ベットの場合は大きく打ってエクスプロイトできます。60%以上の人は反対にリスチールのターゲットとして適切です。4ベットされた場合にはバリューハンドを持っていることが多いです。
CBet F
コンティニュエーションベット(CBet)を打てる場合にCBetを打った%です。
IPのCBetは60~90、OOPのCBは35~50%が適正値とされ、平均するとHUDの数値としては50後半から80くらいになると思います。
復習のときには、IPとOOPで分けて数値を見るとよいです。
フロップの指標なのでデータも貯まりやすく、早い段階からある程度参考になります。100%に近い頻度でCBを打ってきてるプレイヤーはxrのターゲットとして適当で、30%くらいしかCBを打ってこないプレイヤーのCBは信頼性があります。
Fold to F CBet
フロップでCBetを打たれた場合にフォールドした率です。
40%前後が適正値とされます。
プリフロップコールレンジがタイトなプレイヤーになればなるほど、そもそものレンジが強くなるのでCBフォールド率は低くなります。よって、VPIPと併せてみないといけません。CBフォールド率70%以上のプレイヤーはかなり降りすぎなので、より頻度を高くCBを打てますが、そのようなプレイヤーにコールされた場合には、その相手はバリューハンドを持っていると言えます。
Raise Flop CBet
フロップでCBにレイズをした割合です。適正値は、IPで9%、OOPで16%前後とされます。なかなかデータの貯まらない指標ですが、自分が適正にレイズできているかの復習に使えます。因みに私は3万ハンドくらいしかデータがないのであまり参考にできないものの、IP、OOPともに少なすぎという傾向が見えるので、増やさないといけないなと思っています。
WTSD%
Went to Showdown%とは、フロップを見た後にショウダウンまで行った割合です。
30%前後が適正とされます。
40%以上はコールし過ぎな相手なので、そのようなプレイヤーにはブラフを控える必要があり、20%以下の相手はフォールドしすぎなので、ブラフを多用することができます。
WSD
Won Money at Showdown(WSD)とは、ショウダウン時に獲得したポット/ショウダウンに行った回数、すなわちショウダウンまで行った場合に勝っている割合となります。
50%前後が適正とされます。
40%以下の場合にはコールし過ぎ、70%以上の場合はフォールドしすぎです。
WTSD%とWSDは、それ単体でも有用な指標ですが、それぞれ密接に関連する指標で、これらの数値の高低の組みあわせることで、プレイヤーの傾向が見えるので、極めて重要な指標となります。
WTSD%高・WSD高
まずない組合せなので省略します。
WTSD%高・WSD低
コールし過ぎでずるずるショウダウンまで行って負けているということで、コーリングステーションと呼ばれるプレイヤーに見られる組み合わせです。
AFが低く、VPIPが高くPFRも低ければコーリングステーション確定です。
VPIPが低い場合には、タイトパッシブなプレイヤーになります。
いずれにせよ、バリューベットを頻度高く大きめに打つことで大きく利益を上げられますし、レイズなど反撃された場合はすぐに降りて、また何でもコールされるのでブラフもやや控えるべきです。
WTSD%低・WSD高
タイトで上手いプレイヤーにも見られる組合せで、ショウダウンまでいって勝つことも多いですが、ブラフに降りすぎなことも多いです。
WTSD%低・WSD 低
降りがちなのにショウダウンでも負けているということなので、これもあまりない組合せですが、タイトアグレッシブなプレイヤーがリバーで強いハンドやショウダウンバリューのあるハンドもブラフに回して打ってノンショウダウンで終わらせて勝ったり、ブラフをしなさすぎでチェックで回してショウダウンで負けている場合などが当たります。
なお、私はWTSD%25%、WSD46.45%なのでギリギリ適正ですが、どれが近いかというとこのカテゴリに該当します笑 ちょっとブラフに降りすぎですかね。
Statistics欄での復習方法
PokerTrackerで自分のデータを見て復習するには、View Statsのタブを押してから、Statisticsのタブを押して、下のBasicでもAdvancedでもどちらでもよいので、右クリックしてConfigure Reportを選択して指標を追加していきます。
Searchの欄で追加したい指標を検索してダブルクリックで追加していきます。
調整したあとの数字を見て自分のプレイが適正値に入っているか、ポジション、セッション、日付などで区切って検証ができます。
自分でどこを直そうか心掛けてプレイしたあとの数字とその前の数字を見比べてちゃんと改善できていてるか、主観的な印象ではなくデータに基づいて客観的に確認できます。
この辺の設定は、別の記事で詳しく説明しています。
トーナメントのHUDの使い方については、よりハンド数が貯まりにくく、活用方法が難しいので、また別の機会に回します。
興味がある方は、日本トッププロの木原直哉さんが有料noteを書かれているので、購入されるとよいと思います。もちろん私も購入してます。
ノート
あとプレイヤーノートも活用してプレイヤーの傾向を記録しておくとよいと思います。PokerStarsのノートでもよいですし、PokerTrackerにもノート機能はあります。
具体的には、特殊なハンドをショウダウンした時にそのときのスタック、ポジション、アクションラインを詳細に記録しておくと、そのプレイヤーのハンドレンジとアクションの頻度を特定するのに役立ちます。
ショウダウンに至らないハンドであっても、HUDの数値には直接的には出てこない特徴的なアクションラインをしている人、CB打ってコールされたらターンチェックチェックでリバー打てば勝てる、BMCB打てば勝てるとか、逆にBMCB打ちすぎとか、フロップのxrの後のアクションライン、必ずターンでも打ってくるとか打ってこないときはベットに必ず降りるなどプレイの最中に気が付いたことをノートに書いたり、また、そのノートの内容が復習の際に何度もやっていることを確認できたら、その旨もプレイヤーノートに書くとよいと思います。
あと、先ほどのWSTD%とWSDの組合せについても、ある程度ハンドが貯まっているプレイヤーについては、復習の時点で特定してノートに書いておくとすぐに分かるので有用です。
まとめ
以上、ポーカー界に革命を起こした統計ツール「ポーカートラッカー」で分析できる基本的な統計指標、初心者でも活用しやすい指標の使い方、復習の方法ついて、解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
かなり数を絞って解説しましたが、それでも数が多く難しい概念だったと思うので、一通りざっくりと内容を理解して導入したうえで、実戦で使って、特に復習の際に活用すると成績もきっとよくなると思います。慣れてきてハンド数も増えてくれば1つずつ指標を増やしていくとよいでしょう。
※この記事はスポンサーの依頼により執筆されています。
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