ベットする2つの目的~バリュー・ブラフはもう古い!?

今回ですけれども、ベットする目的について解説したいと思います。

これまでの投稿でも説明していますが、

自分のハンドに負けているハンドにコールしてもらって利益を最大化するために行うベットをバリューベットと言い、

自分のハンドに勝っているハンドにフォールドしてもらって相手のエクイティを奪うためのベットをブラフといいます。

私の記事では、ベットする場合は、バリューかブラフかどちらを目的に、どのようなレンジをターゲットとして打っているのか、コンビナトリクスやボードテクスチャを意識してベットすべきとしつつ、

ベットの目的は、バリュー・ブラフ明確に二分されるものではなくグラデーションのある濃淡のあるものだと解説してきました。

この記事では、このベットの目的について、より詳細に現代の理論を解説し、

どのような考え方に基づいてベットを行うべきか、

初心者の人にも効果的で分かりやすい手がかりとなるような考え方を紹介します。

是非最後までご覧ください。

2つのベットする目的

ベットする目的は、

①自分がエクイティの大きいハンドを持っている場合、ショウダウンで勝ったときに獲得するポットを大きくすること

②相手が持っているエクイティを放棄させてその場でポットを獲得すること

の2種類になります。

①はバリューベット、②はブラフをする理由に似ていますが、まず排他的な分類でないという点で大きく異なります。

1つ目の勝ったときのポットを大きくする目的については、自分が勝つことが分かっていれば利益を最大化したいというのは自然なので、直感的に理解できると思います。

エクイティが大きく強い場合には、ショウダウンに至っても勝つ確率が高いのでポットを大きくする目的で高頻度にベットすることになります。

2つ目の相手が持っているエクイティを放棄させてそのエクイティを自分のものにしてその場でポットを獲得するために行うベットについては、これまでフォールドエクイティとしても強調してきましたが、ショウダウンで全く勝つ見込みのないエクイティの小さいハンドやそこそこエクイティがあっても弱い場合でその場でポットを取りたいときなどにベットを行うことになります。

これらの要素は濃淡はありますが、どちらかがあればどちらがなくなるといった排他的なものでなく、むしろ強いハンドは両方兼ね備えていることの方が多いです。これら2つの目的が濃い場合ほどベットをすべきとなり、どちらの目的も満たせない場合、薄い場合にはチェックを行うことになります。

まず前提となる知識としてエクイティと期待値を説明します。

エクイティと期待値

エクイティとは、その時点でオールインになった場合に、ショーダウンでそのハンドやレンジが勝つ確率、勝率のことです。エクイティが大きいというのは勝率が高いということで、エクイティが小さいというのは勝率が低いということになります。その時点でハンドを持っているプレイヤーのエクイティをすべて足すと必ず100%になります。例えば、ポーカーの勉強法の記事で紹介した「基本的なハンドの勝率」がプリフロップ時点でのそのハンドのエクイティになります。

一方でエクイティと混同されやすい概念として期待値(EV)があります。期待値とは、相手のハンドやレンジに対して、自分のハンドやレンジが平均的に勝てると期待できる金額のことです。ハンドの期待値は、エクイティと違って、非常に多くの変数によって決定されるのでソフトウェアを使わないと計算できません。

フロップ、ターン、リバーのカードの出方だけで数値が変わっていくのがエクイティで、

それに加えてプリフロップからリバーに至るまでの各プレイヤーのアクションによって数値が変わっていくのが期待値です。

強いエクイティ、弱いエクイティ

エクイティの大小に基づきベットするかしないかを決めるのですが、大小だけでなく、もうひとつ、エクイティの強弱についても、着目する必要があります。

強いエクイティ(robust equity)とは、相手のハンドやレンジが強くなってもそのままエクイティの大きさが維持されるようなエクイティのことで、弱いエクイティ(vulnerable equity)とは、相手のレンジが強くなるとすぐにエクイティが小さくなってしまうようなエクイティのことです。

強いエクイティの代表的な例は、セットやナッツドローです。セットの持っているエクイティは仮に相手にドローを引かれたとしてもフルハウスを引けば逆転する可能性は常にあるので相手のレンジが強くなったとしてもその大きさは維持される種類のエクイティとなります。また、ナッツフラッシュドローやナッツストレートドローは引けば必ずナッツになりますので、引いた場合には、相手のハンドやレンジがどれくらい強くなっても問題にならず、そのまま維持される強いエクイティを持っているハンドと言えます。

例えば、こちらがミドルセットを持っている場合、フロップ、ターンとレイズやベットをしていくと、相手は、ツーオーバーや弱いペアやトップペアの弱いキッカー、弱いドローはフォールドしていくので、相手のレンジに残るハンドは、オーバーペアやトップペアグッドキッカー、強いドローしか残らなくなり、その場合には、こちらのエクイティも少しずつ減っていくことになりますが、それでも引き続き大きなエクイティを維持できることになります。したがって、ベットを続けていってポットが大きくなってしまって、相手のレンジも強くなってしまったとしても、引き続きこちらのエクイティも維持することができるので、強いエクイティを持っているハンドの場合には、ポットを大きくする目的のベットをすることができます。

一方で、エクイティがそこそこ大きいハンドでもそのエクイティが強くないハンドについては、フロップ、ターンでベットを続けると、相手のレンジが狭く強くなる結果ショウダウンで勝てなくなるため、強いエクイティを持っているハンドほどベットを繰り返してポットを大きくしても問題ないとはなりません。何も考えずにベットを繰り返していると、弱いエクイティのハンドにはフォールドされ、強いエクイティのハンドだけが相手のレンジに残ってしまい、相手のレンジが狭く強くなってしまって、ショウダウンで勝つことができなくなったり、反撃されたときに対応できなくなるためです。

エクイティの強弱はエクイティの大小と関係ないことに注意しないといけません。また、同じハンドのエクイティでも強いエクイティの部分と弱いエクイティの部分も存在することにも注意してください。例えば、A9hhが8c7h2dのフロップで持っているエクイティは、バックドアナッツフラッシュドローやストレートドローのエクイティの部分は強いエクイティで、Aハイ、9ハイの部分は弱いエクイティになります。

エクイティとベットの関係

エクイティが大きくて強い場合は、安心してポットを大きくする目的でベットを打てます。一方でエクイティが全くないか小さい場合は、諦めるか、そのエクイティを犠牲にして、エクイティを放棄させる目的でブラフのベットを打つことができます。

このような両極端な例は判断も簡単ですが、これまでも申し上げたとおり、実際には、ハンドの中にもエクイティの強弱が濃淡を持った形で混在し、また強弱がはっきりしていない場合も多くケースバイケースで判断する必要があります。

ですが、エクイティの大小や強弱に基づいたベットの指針があると、格段にプレイしやすくなると思います。

まとめると次のようになります。

①強くて大きいエクイティを持っている場合は、ポットを大きくする目的でベット、

②弱くて小さいエクイティを持っている場合は、そのエクイティを犠牲にしてブラフに変えて、相手にエクイティを放棄させる目的でベット

③強くて小さいエクイティを持っている場合は、相手にエクイティを放棄させたり引いたときに獲得できるポットを大きくする目的でベット

④弱くて大きいエクイティを持っている場合は、相手にエクイティを放棄させ自分のエクイティを守る目的でベット、

⑤そこそこのエクイティがあって、ブラフに変えて犠牲にしたりレイズされてエクイティを放棄するにはもったいない場合はチェック

というものになります。

繰り返しになりますが、①~⑤は排他的なものではなく1つのハンドに複数の要素が含まれうることに注意してください。

これらの要素のうち、ブラフをするというのは、自分のエクイティ、リバーの場合はショウダウンバリューを犠牲にして相手のエクイティを放棄させに行って、ポットを取ろうとするものだというのは、非常に重要な概念なので覚えておくのがよいです。

また、エクイティを放棄させてポットを取りに行くという概念から、オールインがなぜ強いのかも説明できます。オールインをすると、自分のエクイティを放棄することは原理的になくなり、相手がエクイティを放棄するかどうかだけになるからです。

具体例

最後に具体例をいくつか解説したいと思います。

100bb持ちでBTNからAKhhで3bbレイズでBBがコール。フロップがQhTd3hの場合。

この場合、BTN側には、ツーオーバーナッツフラッシュドロー、ガットショットストレートドローがあって、ナッツフラッシュドロー、ガットショットストレートドローの部分のエクイティは強いエクイティで、A、Kの部分も弱いですがそこそこのエクイティがあり、トータルのエクイティは74.17%、EVは9.13bbとなっています。この時点ではQヒットやポケットペアにも負けていますが、強く大きなエクイティがあるので、相手のエクイティを放棄させる目的からでもポットを大きくする目的からでも高頻度でベットすることができます。

一方で、フロップがKc9c8dの場合は、トップヒットトップキッカーはあってエクイティも81%と大きいですが、相手にもかなり多くドローがあってこちらのエクイティは弱くなります。その結果、EVも7.87bbとエクイティが大きい割には先ほどよりも期待値は小さくなっています。このような場合は、自分のエクイティを守り相手のエクイティを放棄させるためにベットすることになります。

フロップが9s8d7cの場合は、AhKhのエクイティは41.87しかありません。この場合のエクイティは弱く小さいですが、ブラフに変えるほど全くない訳でもなくそこそこあるということで、チェックが推奨されています。同じフロップでも、例えば、バックドアフラッシュドローもなく単なる1オーバーカードしかないA2hhやK2hh、K3hhなどはエクイティ自体も30%もないので、相手のエクイティを奪う目的でのブラフベットも選択肢に入ります。

まとめ

以上、ベットする目的について、解説しましたが、いかがでしたでしょうか?

今回解説した分類は必ずこうするものではなく、ベットもチェックも混ぜなければいけませんし、諦めてチェックすることも必要です。繰り返しになりますが、一つのハンドでエクイティの強弱が混在することも多いです。

エクイティの強弱・大小を見て、ポットを大きくする必要性と相手のエクイティを放棄させる可能性が高まった場合にベットを検討するという形でプレイの指針として活用してください。

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